コーヒー地理学者(Coffee Geographer)。エチオピアでの長年にわたるフィールドワークをもとに、英国エクセター大学地理学科で博士号を取得。現在は東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター(ASC)特別研究員として、エチオピアから始まり世界へと広がるコーヒーの旅「コーヒーロード」を追いながら、コーヒー地理学という新たな研究領域の開拓に取り組んでいる。産業・農業・観光・外交・都市・翻訳・記憶・移動といった多様な視点からコーヒーを読み解いている。
文化地理学者(英国エクセター大学 地理学博士)
東京外国語大学 現代アフリカ地域研究センター 特別研究員
米国CQI認定 Qグレーダー(コーヒー国際鑑定士)
Beletu Inc. / Beletu Coffee Roastery Lab 創業者
Global Coffee Society 創設者・ディレクター
ユン・オスン博士は、梨花女子大学で哲学を学んだ後、成均館大学公演芸術共同課程で修士号を取得し、文化芸術や観光企画の分野で数多くのプロジェクトに携わりました。その後、エチオピアのコーヒーツーリズムを研究テーマとして、日本・一橋大学大学院で社会学修士、英国エクセター大学大学院で博士号を取得しました。
韓国にてエチオピアコーヒーのプラットフォーム Beletu Inc. を創業し活動するほか、コーヒーを媒介として、アフリカとアジアをつなぐ文化的ネットワークの研究にも取り組んでいます。
2025年からは日本に拠点を移し、東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター特別研究員として、「Asia Coffee Road(アジア・コーヒーロード)」プロジェクトの研究を進めるとともに、日本国内の学術界やコーヒー業界との連携にも積極的に取り組んでいます。
主な著書に、
『 勉強流浪(공부 유랑)』
『ときめくのは、コーヒーだから(설레는 게 커피라서)』
『コーヒーと人類のゆりかご、エチオピアへの招待(커피와 인류의 요람, 에티오피아의 초대)』
などがあります。
コーヒー文化、地域アイデンティティ、そしてアフリカとアジアを結ぶ文化的ネットワークをテーマに、国内外で研究・執筆・講演活動を展開しています。
また、韓国教育放送公社(EBS)のドキュメンタリー番組『私は伝説だ ― エチオピア編(세계테마기행 - 나는 전설이다,에티오피아 )』に出演するなど、広く一般に向けた文化発信にも力を注いでいます。
私はもう20年近く、エチオピアのコーヒーを研究してきました。最初は日本で修士課程、その後イギリスで博士課程。テーマはずっと「エチオピアのコーヒーとツーリズム」です。だからエチオピアのコーヒーの味と文化については、ちょっと自信があります。
2005年、日本国際交流基金のフェローシップで初めて日本に来ました。そのときの私は、日本語の形容詞を5つくらいしか知らず、なんでも「サムイ」で済ませていました。頭が痛いときは「アタマ、サムイ」、お金がないときは「オカネ、サムイ」、お腹が空いたら「オナカ、サムイ」―今思い出すと笑ってしまいますが、そのおかげで後にエチオピアでアムハラ語を学ぶときも助かりました。
8か月間の研修を経て、少しずつ日本語でプレゼンできるようになり、2007年には一橋大学大学院に進学しました。
あの頃は、まさか自分が日本語で本を読み、論文を書き、日本人と深く議論できるようになるとは想像もしていませんでした。人生は本当に、歩いてみないと分からないですね。
一橋大学で修士課程を修了したあと、指導教授にこう言われました。
「この研究テーマは本当に面白い。日本だけで終わらせるのは惜しい。英語圏で博士号を取ってみてはどうか?」
当時の私はびっくりして、思わず聞き返しました。
「先生、私をもう指導したくないからですか?」
すると先生は笑って首を振り、こう言ったのです。
「違うよ。推薦状を書くから、ぜひ挑戦してほしい。」
そうして2009年、奨学金をいただいてイギリスへ渡り、博士課程を始めました。テーマはもちろん、エチオピアのコーヒーとツーリズム。学問の世界で「コーヒー」を研究対象にするのは珍しく、道のりは決して平坦ではありませんでした。それでも、世界中の研究者や現地の人々との出会いに支えられ、研究を続けることができました。
博士課程の間も、私は毎年エチオピアに戻りました。友人たちは「もう帰ってこないだろう」と思っていたようですが、むしろ私は研究やビジネスを通じて毎年彼らと再会しました。
パンデミック期を除けば、博士課程の頃からずっと、一年の半分近くをエチオピアで過ごしてきたのです。
博士号を取得したあとも、私はエチオピアと深く関わり続けてきました。そして今、私は日本に戻り、国立大学で「コーヒーロード」研究を進めています。
エチオピアのコーヒーが、エチオピア国内で「第一の生涯」を歩んだなら、私はその「第二の生涯」を追いかけて世界を旅しているのです。
もし「エチオピアのコーヒー一杯の意味は?」と聞かれたら、一言で答えるのは難しい。けれど確かなのは、「とにかく美味しい」ということ。そして「他にはない唯一無二の存在」ということです。
私はコーヒー生産地のディズニーランド=エチオピアで長く研究を続け、今はコーヒー消費地のディズニーランド=日本で新しい研究を始めました。2025年3月、たった二つのスーツケースを持って東京へ引っ越し、ここで新しい生活を始めたのです。
中年になってすべてを投げ出し、あらためて研究に飛び込む――簡単なことではありません。だからこそ、私は皆さんにお願いしたい。どうか批判よりも、応援を多めにお願いします。「褒められればクジラも踊る」と言いますが、私もきっと 誉められたら踊る一頭になれるでしょう。
これからもエチオピアのコーヒーについて、そして世界のコーヒーについて、たくさんお伝えしたいと思います。
コーヒー地理学者 ユン・オスン